2018年度 協豊会 安全衛生委員会 講演会を開催しました

テーマ:失敗学入門

『人はなぜ似たような失敗を繰り返すか』
講 師:東京大学大学院 工業系研究科教授
      中尾政之氏(なかお まさゆき)
日 時:2018年11月8日(木)13:30~15:30
会 場:安城市民会館・サルビアホール

◆開催概要
 例年1月末に実施していた安全衛生講演会を今年は11月に実施。
会場も今回初めてとなる安城市民会館・サルビアホールに、東京大学の中尾政之先生をお招きし、“失敗学入門「人はなぜ似たような失敗を繰り返すか」”をテーマに講演頂きました。
会場にはトヨタ自動車㈱様、栄豊会様、協豊会会員各社様、協豊会安全衛生委員会関係者を含め、過去最多の総勢598名が参加され、盛大な講演会となりました。
 
 ◆開会挨拶
 【協豊会安全衛生委員会 土佐委員長】
 2018年度は、当委員会も、トヨタ自動車殿の調達方針を受け、「重大災害ゼロ必達に向けた『再発防止から未然防止』への具体的な活動と実行で重大災害発生未然防止の強化を図る」という方針を打ち出して活動して来ました。未然防止点検や、そこから見えてきた弱みや改善活動を通じ、グループ研究会活動や、災害情報の展開などで皆様と共に労働災害撲滅に向けた活動を進めてまいりました。
 本年1月から昨日(11月7日)までに発生した重大災害は11件と、まだまだ油断できませんが、昨年の19件からは若干低減されるかと思います。2015年から12件程度の発生が続いて来た国内の災害が現在3件へ低減。反面、海外は8件と昨年よりも1件増え、国内の活動が海外にまで展開しきれていないと理解しています。災害の形態も、挟まれ・巻き込まれ・転落、を繰り返している中、窒息・感電など、現象の幅が広がり、重点志向だけでなく、多岐に渡る活動が必要とも感じています。
 ここ数年重大災害の推移は同じような状態を繰り返していますが、今まで以上の努力を繰り返さなければ、今以上の成果は出ないと感じています。
自動車業界は、100年に1度の大変革期。変革を進めるためのベースは人、こう言う時期だからこそ人に向けた、安全で働きやすい環境や職場を絶対的に作らなければいけない。更には、働く人達そのものに安全意思を高めて行く必要があると思います。重大災害を撲滅する為に、人の特性と災害に至るメカニズムを理解して安全対策、未然防止への活動をより一層高める必要があります。
 この後、東京大学大学院の中尾先生から『失敗学入門。人はなぜ似たような失敗を繰り返すか』についてご講演を頂きますが、同じような災害が繰り返されている我々協豊会の課題に対するヒントやアドバイス・メッセージが入っていると思いますので、自社へ持ち帰っての実践を是非お願いします。 
◆講師紹介   
1958年9月 生まれ 
1981年3月 東京大学工学部産業機械工学科卒業
1983年3月 東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻修士課程修了
    4月 日立金属株式会社入社 同社磁性材料研究所勤務、磁気ディスクに従事
1987年1月 同社設備開発研究所転勤、磁気ヘッド生産設備の設計に従事
1989年2月 HMT Technology Corp.出向、磁気ディスクの生産に従事
1992年3月 同社退社
    4月 東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻助教授 
2001年3月 東京大学工学部附属総合試験所教授
2002年1月 東京大学大学院工学系研究科総合研究機構教授 
2006年4月 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻教授
 
◆講演会         
 ご講演は、東京大学の実験室での冷蔵庫の爆発、台湾の鉄道線脱線事故、韓国のフェリー転覆事故、2011年の福島第一原発の事故、東大生の就職戦争での苦戦の話などを交えながら、安全衛生、経営、教育等の非常に身近で興味深く、参考になるお話から始まりました。
 失敗学は2000年頃から始まり、ナッレジマネージメントを愚直に行い推進してきたが、2011年(東日本大震災後)から安全活動がガラッと変わり、“つい、うっかり”から“まさか”の事故に世の中が注目。そのころから失敗知識のデータベースだけでは失敗を防げ
 
なくなってきました。それは、周りがデータベースを準備しても、本人がリスクに気付かず脳の活動がスタートしないことが原因で、それを防ぐ為には“自分で考える事が重要”であると教えて頂きました。
 考えるということは、違和感を仮設立証することであり、違和感の検出感度はルーティーンから外れ、外に出ると高くなること。そこで感じたことを何でそう思ったのか、マインドワンダリングして考え、それを記録に残しておき、考える種を沢山持つこと。アイデアマンはその時に考えるのではなく、溜めたものを使うだけであることを分かりやすくご説明頂きました。また、違和感の感度を高める為には、芸術系の教育方法が参考になること。違和感を言葉にする必要はなく、写真や絵で示すのも良いこと、その具体的な方法として「1週間の間に違和感を感じたことを10枚写真に撮る。」ということもアドバイスして頂きました。
 最後に「“決められた事を守る”まじめな子だけが必要ではなく、リーダーはもしそうじゃなかった時にどうしたら良いかと、ちょっとでも考えてみることが失敗を防ぐことに繋がって、良い結果が出るのではないかと思います。」と締められました。
◆終わりの言葉
【協豊会安全衛生委員会 丸山委員】
 中尾先生、素晴らしい講演ありがとうございました。協豊会の会員各社様におかれましても、いろいろな安全活動に取り組んで頂いておりますが、中々、災害の再発は後を絶ちません。私の会社を前提に言うと、ハード対策は当然しなければなりませんし、過去の分析も一生懸命やっていますが、同じような災害が発生しています。本日のご講演により「違和感を感じたことに仮説を立てて検証する」ことが必要であると認識できましたので、それがどこまで出来るか会社に帰ってもう一度じっくり考えてみたいと思います。
また協豊会でも、今日教えて頂いた内容を今後の安全衛生活動に生かして行きたいと考えています。



 ご安全に!!


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