おじゃまします  ―協豊会 小川東海地区幹事に聞く

 協豊会広報委員会は10月24日(水)、岐阜県大垣市の太平洋工業㈱本社に於いて、小川社長にインタビューを行いました。会社概要、沿革、企業体質の強化へのお取り組みや、企業活動のベースとなる安全、品質、環境などへのお取り組みなどを中心にお話を伺いました。
「会社概要、沿革についてお聞かせ下さい」
 ◆会社概要・沿革◆

 当社は、1930年(昭和5年)に私の祖父がベンチャー創業した会社で、国内の自動車保有台数3万5,000台、生産台数はわずか450台という時代に、自動車産業の先見性を見極め、資本金5,000円、従業員10名で自動車用バルブコアの国産化に踏み出しました。日本のカーメーカーが産声をあげる前のことです。創業当時バルブコアは全数輸入であり、輸入品のバルブコアを真似て家内工業的に製造をスタートしましたが、技術もノウハウもないため空気が漏れてなかなか使いものになりませんでした。1934年にようやく空気漏れ検査機を開発し、後にバルブコアの実用新案権を取得。これによって後発メーカーの進出を抑え、国内市場を独占するとともに海外への輸出も増加しました。そして、タイヤバルブの総合メーカーをめざした当社は、1941年にバルブコアとタイヤバルブの一貫生産体制を確立しました。世界トップレベルの品質でPACIFICブランドを確立し、現在では国内シェア100%、世界で25%ほどのシェアをいただいています。
 戦後になって新たにプレス事業がスタートし、トヨタさんとお取引をさせていただくことになりました。ラジエーターグリルやサイドモール、ホイールキャップ等を、プレスをして溶接・メッキ・組み付けまで行う部品として一括受注させていただきました。
 1960年にプレスの新鋭工場として現在の西大垣工場を建設しました。これはトヨタさんの元町工場設立と同じ時期になります。そして、1962年には株式上場をさせていただき、その後プレス金型や樹脂成形加工事業にも取り組んできました。私どもは大垣で生まれ育った企業として、地域に根ざした企業経営を推進するとともに、豊かな社会の実現に貢献できるものづくりをめざしています。

 ◆海外展開・新規事業について◆
 1984年、台湾に初のタイヤバルブの海外拠点を設立しました。急激に円高が進行し、翌年にはプラザ合意が行われた時期で、その後、韓国・米国・タイへと展開しました。プレス・樹脂事業は少し遅れましたが、1990年に台湾、1999年には米国オハイオ州にプレス事業拠点を設立しました。その後中国にも進出し、現在6カ国10会社でグローバル化を進めています。これからも、技術開発含めお客様から認められ、身の丈にあった海外展開を進めていきたいと思っています。
 現在タイヤバルブについては、安全・環境対策としてTPMS(タイヤ空気圧監視システム)の装着義務化が米国・欧州などで法制化されています。タイヤの圧力と温度を自動で測定し、走行時にドライバーに知らせるシステムで、本年から米国でTPMSの生産体制を整え、欧州への販売を計画しています。
 TPMSは、タイヤバルブの専業メーカーである当社が、コア技術・保有技術を複合化し、次世代バルブとして提案した製品で、このTPMS事業を成長させていく事がこれからの課題です。また、プレス事業では、燃費効率を改善する二槽式オイルパンを世界で初めて量産化しました。又、超ハイテン材の冷間加工の開発なども進めています。樹脂事業では、環境に配慮した塗装レス、メッキレスのインモールドホイールキャップやセンターオーナメントの開発、エンジンの防音・防振対策並びに、加飾性のあるエンジンカバーの開発なども行い、海外での事業拡充を進めています。

「環境変化が激しい中、体質強化のお取組みについてお聞かせ下さい」
 ◆創業100周年を見据えて◆

 当社は2年前に創業80周年を迎え、創業100周年に向けての一里塚として長期ビジョン「PACIFIC GLOCAL VISION 2020」を策定し、太平洋工業グループの夢とミッションを明確化しました。世界(グローバル)を舞台に成長し、それぞれの地域(ローカル)の発展に貢献していきたいという思いを込めてGLOCAL(グローカル)という言葉を使っています。長期ビジョンでは、CSRを経営の最重要課題と位置づけ、「5つの“シンカ”」で事業構造を革新し、「融合経営」による企業価値の向上をめざしています。 
 5つの“シンカ”とは、①深化(改善する力)、②進化(革新する力)、③新化(新技術、事業を起こす力)、④真価(企業価値を高める力)、⑤信加(信頼を勝ち取る力)の5つです。

2015年度を最終年度とする中期経営計画「OCEAN-15」は、これらのキーワードを切り口とした具体的アクションプランを策定し、「トップクラスのグローカルな部品メーカー」をめざして様々な取り組みを行っています。
 OCEAN-15では、「守りから攻め」の経営に転換し、国内外拠点の再編・拡充と、事業の選択と集中を加速し、事業拡大を図っていきたいと思っています。刻々と変化する状況を総合的に判断し、様々な課題に対してスピード感を持って対応することが重要であり、太平洋工業グループ一丸となってやり切っていきたいと思いますし、ゴール(達成)できたかどうかもしっかり見極めたいと思っています。

「安全、品質、環境」などのお取組みについてお聞かせ下さい」
 ◆安全◆
 安全活動については、数年前に「協豊会の安全部会長」をやらせていただいた際に一からやり直しました。「安全道場」を作り、新入社員からベテラン、仕入先のトップ・社員の皆さんにも安全を体感いただき、座学だけではできない感性づくりに取り組みました。また、リスクアセスメントも積極的に推進し、組織的なリスクの低減と、労働災害ゼロに向けた継続的な改善に取り組んでいます。
 現在、国内外の子会社にも「緊急安全総点検」を行っていますが、歴史・組織だけでなく、国民性も大きな要因であるとわかり、日本式だけではない各国の特性にあった取り組みに変えつつあるところです。
 私も常日頃から現場を点検し、不具合箇所の指摘・是正に努めています。安全にはゴールはありません。これからもすべての社員が健康で安全・安心に働ける職場環境の実現を推進していきたいと思います。

 ◆品質◆
 当社では、変化点管理の徹底を強化し、製品立ち上がりから補給品になるまでの履歴管理を徹底する「母子手帳活動」を開始しました。製品を人間に例え、①受注・生産準備、②初期管理・量産、③補給の各ステップで、人間の誕生から成長・老化と製品のライフサイクルを同じようにとらえています。
 また、「品質教育訓練道場」を整備すると共に、「金銀銅認定制度」を導入し、個人・ラインのレベル向上を図っています。そして、職場の社員の声を吸い上げる「COMシート活動」、ワースト5品目の真因を突き止め源流対策を実施する「こだわり活動」なども実施し、品質の向上に努めております。
 安全同様、人財育成が大きなポイントになりますので、こういった諸活動を通じ、まずは国内でしっかり人財育成を行い、海外での活動につなげていきたいと考えています。

 ◆環境・危機管理◆
 当社では、定期的に地域懇談会を開催し、地域自治会や行政との交流・コミュニケーションを図っています。大垣は昔から水の都と呼ばれ地下水が豊富な地域で、行政との環境協定の中でも特に重点にしており、「ビオトープ」を造って水の管理や対策を行っています。また、エネルギー問題については、拠点ごとに自家発電を含め計画的に実施しています。
 地震対策については、南海トラフでの地震想定が震度6弱から6強となり、液状化対応も含め、基本的な見直しを図っています。全社一斉の防災訓練では、消防署・仕入先・地域自治会にも参加をいただき、より実態に即した避難、初動対応がとれるよう訓練しています。
 昨年の東日本大震災以降は、「想定・訓練・初動」をキーワードに、被災した東北工場の経験を織り込んで、人命第一の「自職場防災避難マップ」つくりを進めるとともに、図上訓練で課題を抽出し、対策につなげています。
 「BCP・BCM」では、タイヤバルブのような専門製品と、プレス・樹脂製品ではおのずと管理も変わってくると思います。今回、米国にTPMS生産ラインを新設、タイにタイヤバルブの一貫工程増設と樹脂製品のラインを新設するのも、BCP・BCMの一環であります。

「東海地区の幹事さんとして、協豊会活動についてのお考え、メッセージをお願い致します」
 トヨタさんが「いいクルマづくり」に向けてレベルを上げられる中、協豊会の我々仕入先も、良品廉価のものづくりに努めなければならないと思っています。同業種・異業種が一堂に会する協豊会は、トヨタさんの専門部署の方々からご指導いただくことができ、一体となってやっていける非常に素晴らしい活動だと思います。
 グローバル展開が加速する中、研究会活動で最新情報と対処の仕方を考え、企業に持ち帰り実施し、人財育成をしていくことが大事だと思います。また、経営者懇談会では、各社の悩みや実施例に対しトヨタ役員様からのご意見を伺え、大変勉強になっています。
 海外でも各地域の事情に合わせて、お互いが切磋琢磨していける環境が良いと思います。

「ご趣味、健康法、信条などお聞かせ下さい」
 ◆ご趣味・健康法◆
 モータースポーツは昔から興味がありました。自分でやる危険は知っていますので、見るほうに限られますが、F1も1960年代から関心があり、友達のカーレースのピットのお手伝いをしたこともありました。先日も、猿投アドベンチャーフィールドでランクルのハンドルを握らせていただき、現地現物で実車走行を体感しました。わくわく感があって良い体験でした。
 また、当社は岐阜県で「養老カントリークラブ」を経営しており、ゴルフも嗜みますが、人に迷惑を掛けず、楽しくできるゴルフをめざしています。是非皆様も「養老カントリークラブ」にお越しください。

 ◆信条◆
 私は常日頃から何事も「120パーセント主義」で取り組んでいます。100パーセントの結果を出すためには、120パーセントの能力と意欲を持って取り組まなければ良い結果を出せないと思っています。

 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。






小川社長(中央)を囲んで・・・
高橋広報副委員長 (東洋ゴム工業㈱ 執行役員):左
小谷事務局長 :右
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