協豊会一元化10周年おめでとうございます。私は関東、東海、関西協豊会が一元化された新協豊会の初代会長を拝命しました。当時を思い起こしますと、まさかのご指名に驚き、この任を全うできるのかと大変な重圧を感じた事を今でも鮮明に覚えております。そんな私の背中を温かく押して下さったのは、「協豊会は我々のパートナーであり、お互いが共存共栄するためにはグローバルでオープンな会でなければならない」というトヨタ自動車様の基本理念でした。
協豊会の強みは、会員各社がそれぞれの分野で世界No.1を目指す志を持っている事にあります。 それだけに各社は個性的で、一元化された協豊会には会員各社の自主性を生かした柔軟な運営が求められておりました。当時、このような課題を担って就任した私に小さな勇気を与えてくれた本がありました。それは法隆寺宮大工の棟梁だった西岡常一氏の著書『木に学べ』であります。氏は著書の中で、「木は生育した環境によって曲がりや硬さなど一本一本異なった個性を持っているが、それを見極めて的確に組み合わせれば、何百年もの間、風雪に耐える建物ができる」と述べられていました。
協豊会を一元化し、双方向コミュニケーションで意思の疎通を図り、多彩な個性を持つ会員各社をまとめて来られたトヨタ自動車様は、協豊会を神社仏閣に例えれば、正に宮大工の名匠であります。確かな眼力と腕を持った名匠の下、会員各社が常に同じ問題意識を持って力を合わせて来た事が協豊会発展の源であったと私は確信しております。
もう一つ忘れてならないのは、新協豊会発足時はもちろんのこと、今日まで協豊会を縁の下で支えて下さった事務局を始め、各委員会・部会等の企画運営に携わって頂いた皆様の存在です。ここに誌面をお借りして改めて御礼を申し上げたいと思います。
今、自動車産業界は未曾有の苦境にありますが、会員各社が協豊会設立の理念を忘れずに努力すれば、山積する課題は必ず乗り越えられると私は確信しております。